MOVE / 移住
奄美大島の移住準備|仕事とお金から決める順番
奄美大島の移住準備で整理するのは仕事・住まい・移動・生活費の4つです。ただし全部を移住前に決める必要はありません。島に着く前にしか手を打てないものと、着いてからで間に合うものに分けて、東京の仕事を持ったまま家族で移住した私が、実際に決めた順番のまま書きました。
「奄美大島 移住 準備」で検索すると、やることリストがずらっと並んだページが出てきます。仕事を探して、住まいを決めて、車を用意して、生活費を試算する。だいたいどのサイトも同じ4つが並んでいます。
項目そのものは合っています。私も移住前に同じリストを何度も眺めました。
困ったのは、そこから先でした。4つとも大事に見えるので、どれから手をつければいいのか分からない。 全部を移住前に片づけようとすると、いつまでも「まだ準備ができていない」という気持ちのまま時間だけが過ぎていきます。あの停滞、けっこうしんどいです。
移住してから分かったことがあります。この4つには、はっきりした差があるんです。
島に着く前にしか手を打てないものと、着いてからでも間に合うもの。 ここを分けた瞬間に、準備の順番は勝手に決まりました。
4つのうち、本当に急ぐのは1つだけ
急ぐのは仕事です。住まいも車も生活費も、着いてから動かせます。
- 働き方の形(リモート勤務の相談・転職・副業を太らせる)
- 住宅ローンを組む予定があるなら、その下ごしらえ
- 移住支援金の要件確認と、住む市町村の選択
- 本命の物件探し(最初は仮住まいでもいい)
- 車の購入
- 買い物ルートと、生活費の落としどころ
左側は、東京にいるうちのほうが圧倒的に動きやすいものです。右側は、島に着いてから現物を見たほうが早いもの。
だからこの記事は、検索でよく見る「仕事・住まい・移動・生活費」の並びではなく、急ぐ順に書いています。長く書いてある項目ほど、私が長く悩んだところです。
仕事。島に着く前に、形を決めきる
準備の9割はここだと感じています。
台風の備え方も、ゴミの出し方も、病院の場所も、島に着いてから覚えれば済みます。誰かが答えを書いてくれているものばかりです。でも「自分がどうやって食べていくか」だけは、どれだけ検索しても答えが落ちていません。
そして厄介なのが、この問題は移住したあとのほうが解きにくくなるということです。
まず、今の仕事を持っていけないか確かめる
島の求人サイトを開く前に、やってほしいことがあります。
今の勤め先に、リモートで続けられる可能性が本当にゼロなのかを確かめる。これだけです。
私は東京の本業をそのまま持ってきました。特別な交渉術があったわけではなく、業種と職種がたまたまリモートと相性がよかった、というだけの話です。それでも、この一点が決まった瞬間に、他の不安が驚くほど小さくなりました。収入のレンジが変わらないなら、家賃も生活費も「今の感覚」で計算できるからです。
副業を持っている人なら、太らせておく時期も移住前です。島に渡ってから受注を増やすより、東京にいるうちに実績と取引先を作っておくほうが早い。
もし住宅ローンを組む予定があるなら、ここはさらに重くなります。移住と転職を同時にやると、勤め先と住所が一度に変わるので、審査する側から見て不確かな要素が2つ増えます。金融機関が申込条件に置く勤続年数は「1年以上」がもっとも多いとされていて、収入の中心を移した直後は継続性がまだ読めない状態として扱われます。
家を建てるつもりがあるなら、事前審査だけでも先に通しておく。 これは移住後にはもう戻せない順番です。
島で探すつもりなら、数字を先に見ておく
もちろん、島で仕事を見つける道もあります。ただ、期待値の調整だけは先にしておいたほうがいいです。
ハローワーク名瀬管内の有効求人倍率は0.81倍。鹿児島県内でワースト2位の水準です。仕事がまったくないわけではありませんが、「選べる」状況ではありません。
一方で、求人ボックスの集計では奄美市の平均年収が363万円と、鹿児島県の平均を上回るという逆転現象も起きています。この数字のからくりも含めて、求人と給料の話は別記事で詳しく検証しました。
島で職を見つけて暮らしている人が実際どうやりくりしているのか、その実感を私は持っていません。持ってきた側の人間なので。ここはいつか、当事者の方に話を聞いて書き足したい部分です。
生活費。県の統計は、島の話をしていない
準備で2番目に時間をかけたのが、ここでした。
移住前、鹿児島県の物価データを調べて少し安心したのを覚えています。総務省の消費者物価地域差指数(2023年)を見ると、鹿児島県は総合95.9。全国平均を100としたときに、47都道府県でもっとも物価が安い県として出てきます。
ところが、この数字には落とし穴がありました。
調査の対象になっているのは、県庁所在市。つまり鹿児島市です。 海を渡った先の輸送コストは、この指数に1円も入っていません。「鹿児島県は日本一物価が安い」という統計と、島で買い物をしている実感が噛み合わないのは、当たり前だったわけです。
この手のズレは、移住の試算をするときに何度も出てきます。県単位の平均値を見て安心しないほうがいいです。
見積もるなら、島の数字を直接拾ったほうが早い。参考までに、公的なところで確認できるものを並べておきます。
- ガス: 都市ガスは名瀬の市街地の一部だけで、大部分はプロパンです。奄美市の平均は4人家族で月15,397円ほどという民間の集計があります(適正価格の目安は月11,930円。調査時点の記載がないので、あくまで参考値として)
- 水道: 奄美市の基本料金は口径13mmで月620円、20mmで1,170円。従量料金は10㎥までが1㎥あたり75円、10〜20㎥が125円(いずれも税抜・下水道使用料は別)
- 電気: 沖縄電力ではなく九州電力の管轄です。本土と同じ料金体系で計算して問題ありません
- 子どもの医療費: 奄美市在住なら18歳到達年度の末日まで、県内の医療機関では窓口負担なしです
- 保育: 3歳児クラスから就学前は無償。2歳児クラス以下は住民税非課税世帯が対象です
食費については、私は「思ったより本土と変わらない」と感じている側です。魚は新鮮で安いですし、肉もおいしい。もっとも、これは家庭の買い方でかなり割れるところだという気もしています。
明確に効いてくるのは、ガソリン代と通販の送料のほうでした。島にないものはネットで買えばいいと考えていましたが、運送会社や出品者によっては離島の中継料が乗ります。最後の確認画面で送料を見て、そっと閉じることが今もあります。
住まい。大手サイトで「物件がない」と判断しない
移住前、SUUMOで奄美市の賃貸を検索して固まりました。14件。市の全域で、です。
これを見て「島には家がない」と結論を出しかけたのですが、これは間違いでした。
地元の不動産ポータル「奄美の島」を開くと、奄美市だけで51件、群島全体では100件近くが並んでいます。掲載条件が違うので単純比較はできないものの、大手サイトだけを見ていると実際の3割程度しか見えていない可能性が高いということです。島の物件は相対取引が主体で、そもそもネットに出ないものもあります。
相場の目安はこのあたりです。SUUMOの集計(2026年7月10日更新)で、奄美市の1Kが6.5万円、1LDKが7.7万円、2LDKが8.8万円。「田舎だから家賃が安い」を期待していると、ここは裏切られます。輸送コストと供給の少なさが、そのまま家賃に乗っている印象です。
空き家バンクを当てにしている人もいるはずです。制度自体は奄美市にも龍郷町にもあります。ただし奄美市が公表している数字を見ると、2015年の開始から2022年5月までで契約成立は33件、登録中の物件は35件。一方で利用を希望する登録者は2018年度の13件から2021年度は43件へと増えています。借りたい人は増えているのに、出てくる家が足りていないという状態です。空き家バンクで見つかったら儲けもの、くらいの前提で住まいの計画を組んでおくほうが安全です。
買う・直すほうの支援は具体的です。奄美市の場合、住宅購入費の助成が基本50万円(18歳未満の子どもがいれば加算があり最大100万円)、空き家バンク登録住宅のリフォームが工事費の2分の1で上限50万円、家財処分費が上限10万円。それぞれ居住継続の年数が条件に付きます。
そして、島の物件探しは現地に強い人ほど早い。だから私は、住まいを「着いてからでも間に合う」側に置いています。最初から本命を決めきらず、仮住まいから始めるくらいでちょうどいいはずです。
移動。車は必須。見落としやすいのは引っ越し代
車がないと生活は成り立ちません。電車はありませんし、路線バスも本数が限られます。迷う余地がないので、この項目は1行で終わります。
見落としやすいのは、荷物のほうでした。
本土から奄美へ引っ越すと、輸送は基本的に海上のコンテナ便になります。相場の目安として出回っているのは、東京発の10Fコンテナで30〜40万円、大阪発で28〜35万円、鹿児島発なら20〜23万円というあたり。この数字は2017年時点の情報がもとになっているので、今はもう少し上がっていると見たほうが安全です。
引っ越し費用を本土の感覚(数万円から十数万円)で見積もっていると、ここで一気に崩れます。移住前に必ず相見積もりを取ってください。
自分たちが移動するほうの費用も、ざっくり押さえておくと計画が立てやすくなります。
- 飛行機: 羽田からJALで約2時間20分、片道2〜4万円。成田からのPeachは1万円台の設定もあります。伊丹・関西・福岡からも直行便があります
- フェリー: 鹿児島新港から名瀬まで約11時間。2等で片道10,900円(2026年2月〜4月適用分)。マルエーフェリーとマリックスラインが交互に運航していて、ほぼ毎日1便あります
台風の時期は、この両方が止まります。気象庁の統計だと、奄美地方に接近する台風は2016年から2025年の10年で合計40個。ならせば年4個ですが、2個の年もあれば9個の年もあります。接近するとまずフェリーの欠航が決まり、飛行機は直前まで判断が出ないことが多いです。帰省や出張の予定を7月から9月に入れるときは、この順番を頭に入れておくと少し楽になります。
住み始めてからの備え方は、奄美大島の台風の備えにまとめています。
移住支援金は、住む町で変わる
これは短く済ませます。
東京圏から移る人向けの移住支援金は、同じ奄美大島でも対象になる町とならない町があります。物件の家賃を数千円下げるより、こちらのほうがはるかに大きい。住む場所を決める前に、制度の中身と対象自治体を確かめてください。
教育のこと。ここは私も答えを持っていない
4つの準備からは少し外れますが、書いておきます。
子どもの進学をどうするか。この問いに、私はまだ答えを出せていません。
制度として整っている部分は確認できます。保育料は3歳以上が無償で、子どもの医療費は18歳まで窓口負担がありません。日々の子育てで困る場面も、移住前に想像していたより少ないです。
でも、その先です。高校の選択肢、大学進学のときに島外へ出ていく費用、部活動や塾の選択肢。うちの子はまだその年齢に届いていないので、実感として何も言えません。それが「気にしなくていい」ということなのか、単に順番が回ってきていないだけなのか、自分でも切り分けられていないんです。
同じ不安を持っている方には申し訳ないのですが、ここは私の話を判断材料にしないでください。教育を最優先で考えている家庭なら、実際に通う可能性のある学校まで、必ずご自身の目で確かめてほしいです。
それで、何から始めるか
準備の話に戻ります。
移住前にやることは、そんなに多くありません。働き方の形を決める。お金の見通しを立てる。この2つだけです。 住まいも車も買い物も、着いてからのほうが確実に判断できます。
逆に言えば、この2つが決まらないうちに物件情報を眺めても、たぶん前には進みません。私も同じことをやっていた時期があるので、その気持ちはよく分かります。眺めている時間は準備をしている感じがして、少し安心するんです。
もし今、リストの前で止まっているなら。まずは今の職場でリモートの可能性を一度だけ確かめてみる、そこからでいいはずです。
準備が全部そろってから島に来る人なんて、たぶんいません。
このページについて: 一世帯の実感と、公開されている数字を並べたものです。家賃も生活費も、家族構成や住む地域でかなり変わります。移住支援金・助成金・運賃は年度ごとに条件が動くので、実際に使うときは必ず各市町村の窓口と公式サイトで最新の情報を確認してください。数値は2026年7月時点で確認できたものを記載しています。
よくある質問
移住前に決めておくべきことは何ですか?
本当に急ぐのは仕事です。あわせて、移住支援金の要件確認と住む市町村の選択も移住前に手を打っておきます。本命の物件探し、車の購入、買い物ルートと生活費の落としどころは、着いてからでも間に合います。
住まいはすぐ見つかりますか?
すぐ見つかる前提では組まないほうがいいです。地元の不動産ポータルを見ると大手サイトだけでは実際の3割程度しか見えていない可能性がありますが、一方で奄美市の空き家バンクは2015年の開始から2022年5月までで契約成立33件・登録中35件に対し、利用希望の登録者は2018年度の13件から2021年度は43件へ増えています。最初から本命を決めきらず、仮住まいから始めるくらいでちょうどいいです。
車は必要ですか?
必要です。電車はありませんし、路線バスも本数が限られます。ここは迷う余地がありません。
住まいの支援制度はありますか?
奄美市の場合、住宅購入費の助成が基本50万円(18歳未満の子どもがいれば加算があり最大100万円)、空き家バンク登録住宅のリフォームが工事費の2分の1で上限50万円、家財処分費が上限10万円です。それぞれ居住継続の年数が条件に付きます。