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奄美大島の仕事と給料|移住前に求人データで確かめておきたいこと
奄美大島に移住したら、仕事と給料はどうなるのか。求人ボックスの平均年収363万円、ハローワーク名瀬の有効求人倍率0.81倍、鹿児島県の最低賃金1,026円。2026年7月時点の一次データを並べ直して、島での働き方を3つのルートに分けて検証しました。移住支援金と奄美市の給付金の使いどころもまとめています。
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このあたりで検索している人は、たぶん移住したい気持ちのほうはもう固まっていて、あとは食べていけるかどうかだけが引っかかっている状態だと思います。私もそうでした。島の景色は何度も見ているのに、通帳の数字だけがどうしても想像できませんでした。
私は東京の仕事をそのまま持ってきて移住したので、島で職を探すのは実際にまだ経験していません。だからこの記事に、面接で何を聞かれたとか、給料の交渉がどうだったという話は出てきません。
代わりにやったのは、数字を全部ひっくり返すことでした。求人サイトの平均年収、ハローワークの求人倍率、県の最低賃金、市が出している給付金。移住を決める前の一年、私が実際に見ていたのはこの手の資料です。そのとき「もっとこう並べてあれば分かりやすかったのに」と思ったものを、そのままここに置いておきます。
奄美市の平均年収
363万円
求人ボックス/2026年7月21日更新
奄美市の平均時給
1,065円
アルバイト・パート
有効求人倍率(名瀬)
0.81倍
令和8年5月・鹿児島労働局
鹿児島県の最低賃金
1,026円
2025年11月1日発効
平均年収363万円 — 額面通りには読めない数字
求人サイトを開くと、まずこの数字が出てきます。
求人ボックスの給料ナビによると、奄美市の平均年収は363万円、平均時給は1,065円。正社員の求人が最も集まっている年収帯は286〜343万円です(2026年7月21日更新)。
同じサイトで東京都を引くと、平均年収461万円、正社員のボリュームゾーンは363〜451万円でした。
ここで気づいてほしいことがひとつあります。
奄美市の「平均」年収363万円は、東京都では求人が最も集まる年収帯の、いちばん下の端っこです。 東京で363万円というのは「まあ、そのくらいからだよね」という水準で、奄美では「平均的にもらえているほう」になります。同じ363万円という数字が、島を渡ると意味を変えます。ここが一番はっきり効いてくる差でした。
平均年収が県平均より高い、という妙な現象
もうひとつ、調べていて手が止まった数字があります。
同じ求人ボックスで鹿児島県全体を引くと、平均年収は360万円。奄美市の363万円のほうが、県平均より高く出ています。
離島のほうが県庁所在地を含む県全体より高い。これは常識と合いません。理由はたぶん単純で、この「平均年収」は掲載されている求人の提示額を平均した数字だからです。求人の母数が少ない地域では、たまたま出ている高額求人(医療職や建設の管理職など)の影響が大きく出ます。人口18,000人規模の就業者で構成された市の平均は、それだけ揺れやすい。
同じ表の時給を見ると、印象は逆転します。
| 地域 | 平均年収 | 平均時給(アルバイト・パート) |
|---|---|---|
| 奄美市 | 363万円 | 1,065円 |
| 鹿児島県 | 360万円 | 1,083円 |
| 東京都 | 461万円 | 1,387円 |
時給では、奄美市は県平均を下回っています。そして鹿児島県の最低賃金1,026円との差は、わずか39円です。
年収の平均値より、時給のほうが島の労働市場を正しく映していると私は見ています。 年収は少数の高い求人に引っ張られますが、時給はパート・アルバイトの求人が大量にあるぶん、平均が実態に寄ります。移住の判断材料にするなら、時給と後述の求人倍率を先に見たほうがいいです。
給料より先に効いてくる、この数字
奄美の仕事を語るとき、ネットの記事はほぼ全部「給料が安い」で終わります。それは合っています。ただ、私が資料を並べ直して一番ぞっとしたのは、給料の額ではありませんでした。
鹿児島労働局が毎月出している「労働市場月報かごしま」の令和8年5月号に、県内13のハローワークごとの有効求人倍率が載っています。奄美市と大島郡を管轄するハローワーク名瀬は、0.81倍。
鹿児島県全体が0.96倍、全国が1.17倍ですから、県の中でも全国と比べても低い。13の安定所の中では、大口の0.76倍に次いで下から2番目です。
有効求人倍率0.81倍というのは、求職者10人に対して求人が8件しかない状態を指します。
つまり、こういうことになります。
「安くてもいいから働く」を選べるかどうかの前に、そもそも席が足りていない。
給料が安いという話は、少なくとも交渉や我慢の余地がある話です。求人がないという話には、その余地がありません。移住してから探せばいい、が通用しにくいのはこちらの数字のほうです。ここを見落としたまま「給料は安いけど生活費も安いから大丈夫」と自分を納得させかけていた時期が、私にもありました。
なお、この0.81倍は名瀬の管轄全体(奄美群島)の数字です。奄美大島だけを切り出した倍率は公表資料の中に見つけられませんでした。徳之島・沖永良部・与論を含んだ数字である点は差し引いて読んでください。
奄美大島には、どんな仕事があるのか
「島にどんな仕事があるか」を求人サイトで一件ずつ数えるのは、けっこう骨が折れます。もっと早い方法がありました。
市が自分の予算を使ってまで人を集めようとしている業種を見ればいい。 そこが人手不足の場所です。
奄美市は「人材確保・就職支援給付金」という制度を出していて、その対象を6つの業種に絞って名指ししています。
情報通信業・宿泊業・公共交通事業・建設業・介護福祉業・大島紬業。この6つです。
並べてみると、島の輪郭がそのまま出ています。観光で回っている島だから宿泊業、車社会で運転手が足りないから公共交通、台風のたびに直すものがあるから建設業、高齢化しているから介護。ここに、奄美大島にしかない大島紬が加わります。
頭に情報通信業が来ているのが、私には少し意外でした。奄美市は「フリーランスが最も働きやすい島化計画」という施策も掲げていて、島外の仕事を持ち込む人を歓迎する姿勢は制度の上でははっきりしています。
給付額は、島内在住の新卒者が10万円、島外から移住した人が15万円、国家資格を持っている移住者は20万円。正規雇用されて6か月経ってからの申請です。
この6業種のどれかで働くつもりがあるなら、島での就職はかなり現実的な選択になります。逆にこの6つから外れた職種を志望している場合は、覚悟の量が一段変わります。
働き方は、結局3つのどれか
制度と数字を全部並べたあと、島での働き方は3つに整理できるという結論になりました。移住相談の窓口でも、たぶん最初に聞かれるのはここです。
ルートA:今の仕事を持ってくる
これが一番強いです。理由は単純で、島の労働市場の外側にいられるからです。求人倍率0.81倍も平均年収363万円も、このルートを選んだ人には直接効きません。
移住支援金にも「テレワーク型」があります。移住前の仕事を続けたまま移住し、週20時間以上のテレワークを実施することが要件で、支給額は世帯100万円・単身60万円。ここで注意が必要なのは、会社からの命令による転勤ではなく、自分の意思で移住したことが条件に入っている点です。会社都合の異動で島に来た人は対象外になります。
気をつけたいのは、このルートに準備の期限があることです。移住してから「リモートにさせてください」と交渉するのでは遅い。私が強くすすめるのは、移住の話を出す前に、リモートで完結する働き方の実績を先に作りきってしまうことです。順番が逆になると、交渉のカードが一枚も残りません。
ルートB:島で就職する
想定できる年収は286〜343万円のレンジ。ここに奄美市の給付金15〜20万円が乗ります。移住支援金も、県が指定する対象法人の求人に就業した場合であれば対象です。
このルートの本当のハードルは、繰り返しになりますが金額ではなく求人の数です。希望する職種の求人が、移住したいタイミングで出ているとは限りません。逆に言えば、前述の6業種に当てはまる資格や経験を持っている人は、かなり有利に動けます。国家資格を持っているだけで給付額が5万円上がる制度設計そのものが、島の求人事情を語っています。
ルートC:島で自分の仕事を作る
創業と、地域おこし協力隊がここに入ります。
奄美市には創業支援事業助成金があり、個人事業で20万円、法人設立で30万円。地域おこし協力隊は、総務省が特別交付税で措置している報償費の上限が年320万円、専門性の高いスキルを持つ隊員などは420万円までとされています。
このルートで気をつけたいのは、収入が読めない期間が必ず発生することです。私は移住と同時に家を建てる予定があったので、この選択肢を最初に外しました。住宅ローンの審査で見られるのは今の年収だけではなく、これから先も同じくらい稼ぎ続けられそうかという継続性のほうだからです。家の計画が先にない人なら、また違う判断があると思います。
移住支援金 — 「住む町」と「働き方」の両方で決まる
移住支援金は、金額だけを見ると世帯100万円・単身60万円という分かりやすい制度ですが、実際には二重の条件がかかっています。
ひとつは働き方。前述のとおり、①県が指定する対象法人の求人に就業する ②テレワークで移住前の仕事を続ける ③起業する、のいずれかに当てはまる必要があります。
もうひとつは、住む市町村です。この支援金は市町村が実施主体なので、実施していない町に住むと、条件を全部満たしていても1円も出ません。
2026年4月7日更新の鹿児島県の一覧を見ると、奄美大島の5市町村のうち実施しているのは宇検村と龍郷町のみでした。奄美市・大和村・瀬戸内町は一覧に載っていません。喜界町も対象外です。
同じ島の、車で30分の距離で100万円が変わります。ここは移住先の集落を決める前に確認しておく価値があります。この話は「奄美大島の移住は後悔ばかり」? の記事でも触れました。
最低賃金1,026円という下限
鹿児島県の最低賃金は、2025年11月1日から時間額1,026円です。前年の953円から73円上がりました。
奄美市の平均時給1,065円との差は39円。この島のパート求人の多くは、最低賃金の少し上に張り付いていると読むのが実態に近いはずです。
調べても分からなかったこと
この記事には、埋められなかった穴が3つあります。
ひとつめ。奄美市の創業支援事業助成金が、令和8年度も公募されるのかが確認できませんでした。 令和6年度・令和7年度の公募は終了しており、市の公式ページの更新も止まっています。制度自体が続いているのか、今年度の受付が始まる前なのか、ページからは判別がつきません。使うつもりで移住計画を組むなら、奄美市の商工政策課に電話で確認してください。
ふたつめ。地域おこし協力隊の、奄美群島内での実際の報酬額と任期が分かりませんでした。 320万円・420万円というのはあくまで国が交付税で措置する上限で、実際にいくら出るかは自治体ごとに違います。募集の出ているタイミングでないと条件が読めない種類の情報です。
みっつめ。これが一番大きいのですが、島で職を見つけて暮らしている人が、実際どうやりくりしているのかを私は知りません。 求人票の数字と、その仕事で子どもを育てている人の実感は、たぶん別物です。ここは当事者の方に話を聞いて、いつか書き直したい項目として残しておきます。
それで、島で食べていけるのか
数字を全部並べたあとに残ったのは、こういう感触でした。
奄美大島で「給料が安い」のは本当です。ただ、移住を止めるほどの決定打かというと、そこはもう少し手前の話だと感じています。決定打になっているのは、選べる仕事の数のほうです。0.81倍という数字は、行ってから考えるという選択肢を静かに削ってきます。
だから、移住の準備でいちばん先に手をつけるべきなのは物件でも学校でもなく、自分がA・B・Cのどのルートで島に立つのかを決めることだと思っています。ここが決まると、見るべき数字が一気に絞られます。Aなら求人倍率は無視していい。Bなら6業種と自分の経歴の重なりを探す。Cなら、収入が読めない期間を何か月分の貯金で耐えるかという話になります。
私はAを選びました。家を建てる予定があったから、というだけの理由です。もし家の計画がなかったら、私は何を選んでいたのか。今でもたまに考えます。
この記事の数字は2026年7月時点のものです。求人倍率は毎月動きますし、給付金の制度は年度で変わります。移住の話が具体的になったら、そのときにもう一度、自分の目で最新の資料を引き直してください。
この記事で使った出典
- 求人ボックス 給料ナビ「奄美市の年収・時給」「鹿児島県の年収・時給」「東京都の年収・時給」(2026年7月21日更新)
- 鹿児島労働局「労働市場月報かごしま」令和8年5月号(2026年6月30日公表)
- 鹿児島県「【東京圏から移住をお考えの皆様へ】移住支援金制度の御案内!」(2026年4月7日更新)
- 鹿児島県「鹿児島県の最低賃金について」(2025年12月8日更新)
- 奄美市「人材確保・就職支援給付金」(2025年5月30日更新)
- 総務省「地域おこし協力隊」制度概要
よくある質問
奄美大島の平均年収はいくらですか?
求人ボックスの給料ナビによると、奄美市の平均年収は363万円、平均時給は1,065円です。正社員の求人が最も集まっている年収帯は286〜343万円でした(2026年7月21日更新)。
時給の水準はどうですか?
時給では奄美市(1,065円)は鹿児島県平均(1,083円)を下回っています。鹿児島県の最低賃金1,026円との差は、わずか39円です。
移住支援金はいくらもらえますか?
世帯100万円・単身60万円です。ただし金額だけの制度ではなく、住む町と働き方の両方に条件がかかります。テレワーク型は移住前の仕事を続けたまま週20時間以上のテレワークを行うことが要件で、会社からの命令による転勤で島に来た人は対象外です。
島での働き方にはどんな選択肢がありますか?
大きく3つです。今の仕事を持ってくる(ルートA)、島で就職する(ルートB)、島で自分の仕事を作る(ルートC)。記事ではそれぞれを数字と条件で検証しています。