LIFE / 生活
奄美大島の台風の備え|停電・断水・品薄を家でどう乗り切るか
台風のたびに何が止まるのか。奄美大島に住んで分かったのは、しんどいのは風より停電と品薄のほうだということでした。気象庁の接近数と、島で実際に起きた停電・断水・欠航の記録をもとに、シーズン前・直前・過ぎたあとにやることを順番に書きました。
台風が近づいてくるたびに、天気図を何度も開き直しています。あの落ち着かない感じは、島に来てから毎年です。
私はまだ「これはひどかった」と言えるほどの台風には当たっていません。家が壊れたことも、何日も水が出なかったこともない。だからこの記事は、体験談としては弱いです。代わりに、毎年やっている備えと、この島で実際に起きたことの記録を、混ぜずに分けて書きます。
私が移住する前に台風のことを調べたとき、出てくるのは旅行者向けの「欠航したらどうするか」か、自治体の災害速報のどちらかでした。住んでいる側が知りたいのは、そこじゃないんです。冷蔵庫の中身をどうするか、水が止まったら何で流すか、いつ買い物に行けば棚が残っているか。その段取りが、どこにも書いてありませんでした。
10年で40個。まず数を数えてみました
気象庁は「奄美地方に接近した台風」を、台風の中心が奄美地方のどこかの気象官署などから300km以内に入ったもの、と決めています。その数を2016年から2025年まで足すと、40個でした。ならせば年に4個です。
ただ、この「年4個」はあまり当てになりません。2018年は9個来ていて、2019年・2021年・2023年はそれぞれ2個。同じ島の同じ季節の話なのに、4倍以上の開きがあります。だから「去年は少なかったから今年も少ない」という読み方はできません。私は多い年に当たる前提で用意しています。少ない年は備蓄が余るだけですが、逆をやると足りないまま3日過ごすことになります。
2026年でいうと、6月にひとつ、8月にふたつ、島に被害が出るものが来ています。8月のふたつは半月ほどの間隔でした。台風は1年に1回の行事ではなくて、夏のあいだ何度も繰り返されるという感覚のほうが、実態に近いです。
台風シーズン前に必ずやる2つ
買い出しの話より先に、私が決めているのがこの2つです。
- 保冷剤を多めに凍らせておく
- クーラーボックスを、すぐ出せる場所に置いておく
6月に入ったら、まずこれをやります。理由は単純で、停電したあとに一番困るのが冷蔵庫だからです。夏場にエアコンが止まるのもきついですが、あれは我慢すれば済みます。冷凍庫の中身は、我慢では戻りません。
そして台風が近いと分かってから保冷剤を凍らせても、間に合わないんです。

買い出しは、進路予報に島が入った日に行く
私が最初にスーパーの棚が空になったのを見たときは、さすがに面食らいました。パンも水も、カップ麺の棚も、きれいに何もない。島の人は進路予報に島が入った時点で動くので、前日に行っても遅いわけです。
鹿児島県は、離島に住む人へ最低3日分、できれば1週間分の食料と飲料水を用意するよう呼びかけています。台風で船や飛行機が欠航すると、県本土や沖縄から運ばれてくる生鮮食料品が届かなくなるためです。本土向けの「3日分」より1段階多いのは、そういう理由があります。
とはいえ、台風のたびに1週間分を買い足していたら置き場所がありません。普段から少し多めに買って、使った分だけ補充する。この形にしてから、私の台風前の買い出しはずいぶん軽くなりました。缶詰、水、カセットボンベは切らさないようにしています。
いちばん長引くのは、風ではなく停電です
2026年8月の台風13号のときの記録が分かりやすいので、そのまま書きます。
8日には奄美群島全体で最大4万戸以上が停電しました。そして翌9日の午後8時、停電が4日目に入っても、奄美大島ではまだ5,790戸が復旧していません。
| 市町村 | 9日午後8時の停電戸数 |
|---|---|
| 奄美市 | 3,460戸 |
| 龍郷町 | 1,430戸 |
| 瀬戸内町 | 890戸 |
| 宇検村 | 30戸 |
| 大和村 | 10戸未満 |
龍郷町の1,430戸は、町の全世帯の3割以上にあたります。地元紙には「こんなに停電が続くとは」「そろそろ限界」という住民の声が載っていました。
なぜここまで長引くのか。このときの原因は、倒木で電線が切れたことと、土砂崩れで電柱が傾いたことでした。九州電力送配電が出している復旧の手順を読むと、暴風が収まって巡視できるようになったエリアから作業を始める、と書かれています。つまり道路の倒木や土砂を片づけないと、そもそも現場にたどり着けません。そのうえ電気は発電所や変電所から順に送っていくので、末端の家に戻るのは最後になります。
台風が過ぎたから電気も戻る、ではない。ここは私が移住前に分かっていなかったところです。

同じ2026年の8月には、台風18号も来ています。このときは九州電力送配電の集計で、群島全体の最大3万4,300戸が停電しました。同じ日の午後7時になっても、9市町村の約2万5,250戸が復旧していません。被害の中心は徳之島と沖永良部のほうで、奄美大島は奄美市の約1,400戸、瀬戸内町の約2,430戸でした。同じ台風でも、島によって当たり方がまるで違います。
このときは信号機が消えたままの交差点があり、コンビニも休業しました。自治体は役場や交流館に充電スポットを開けて、携帯の充電を受け付けています。
移住を考えている人には、「台風が怖いかどうか」ではなく「停電が3日続いても平気な準備があるか」で考えてみてほしいです。台風そのものより、そこで生活が止まります。
冷蔵庫は、停電する前に抜いておく
保冷剤を多めに凍らせるのは、停電したときに冷凍庫の隙間を埋めるためでもあります。中身が詰まっているほど、庫内の温度は保ちます。
メーカーの案内も一度読んでおくといいです。パナソニックは、停電すると分かっているときは電源プラグを抜いておくことを勧めています。復旧の瞬間に圧縮機へ負荷がかかるからです。ドアを開けなければ2〜3時間は冷えが保つこと、7分以内に復旧した場合は7分以上待ってから差し直すこと、といった数字も出ています。冷蔵室のほうは7割程度にしておくのが目安だそうです。
停電のたびに開けて中身を確かめたくなりますが、あれが一番よくないんです。冷凍庫は詰める、冷蔵室は7割、扉は開けない。何年か過ごしましたが、実際に毎回守っているのは今もこの3つだけです。
停電すると、水まで止まることがあります
これは移住してから知りました。
2024年9月の台風13号のとき、瀬戸内町の阿木名では停電の影響で一時的に断水しています。水道は電気で動くポンプで高いところの配水池まで水を上げているので、停電が長引けばポンプも止まります。
2026年8月の台風18号でも、天城町の8集落と、瀬戸内町の加計呂麻島・瀬武地区で断水が起きました。徳之島では停電でポンプが止まったことに加えて、土砂崩れで水道管が壊れたことが重なり、給水車が出ています。
飲む水を何本用意するかは考えても、流す水のことは抜けがちです。浴槽に水を張っておけば、それだけでトイレ数回分になります。台風が近づいた日にやることのリストに、これを1行足しておくといいです。

給水車が来る場所と時間は市町村が個別に出すので、そのときに探すことになります。断水が何日も続いた場合にどう暮らすかは、まだ経験していません。
船が止まると、島の在庫はそのまま減っていきます
2026年8月の台風13号では、海の便も空の便も全便が欠航しました。海の便が再開したのは、6日ぶりです。
島のスーパーに並ぶものの多くは、本土から船で来ます。船が動かなければ補充されません。台風が過ぎて空が晴れても、棚はまだ戻っていないんです。このときの地元紙は「食品品薄、停電で店側も苦慮」という見出しで書いていました。店のほうも停電していれば、冷蔵の商品を出せないという事情が重なります。

通販も同じです。台風13号のときは、鹿児島県と沖縄県あての荷物に遅れが出るという案内が運送会社から出ました。台風の前後は「注文したものが来る」という前提を、一度外しておくほうが安全です。薬、おむつ、ペットフードのように切らせないものがある家は、台風シーズンのあいだだけでも残量を早めに見ておくほうがいいと思います。
船と飛行機がどういう順番で止まるかは、奄美大島の移住準備のほうにも書きました。
電気より先に、電波が消えることがあります
2026年8月の台風18号では、携帯の通信障害も起きました。ドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社とも、瀬戸内町や龍郷町、奄美市を含む地域で障害が出て、その日の時点では復旧のめどが立っていません。
停電すれば家のWi-Fiは当然止まります。そこに携帯まで加わると、停電情報も自治体のお知らせも見られなくなります。電池で動くラジオを1台持っておく理由は、ここにあります。
停電情報の見方だけ、先に覚えておく
九州電力送配電の停電情報のページで、市町村ごとの停電戸数が見られます。表示は「停電なし」「1〜1,000」「1,001〜5,000」「5,001〜10,000」「10,001以上」の5段階で、戸数は10戸単位に四捨五入されています。集計の対象は、おおよそ5分以上の停電です。
「停電履歴」から過去の停電もたどれます。住む地区を決める前に履歴を見ておくのは、悪くない使い方だと思います。
避難所は市町村がそれぞれ出しています。奄美市の場合、風水害のときに開ける避難所は名瀬54カ所・笠利28カ所・住用20カ所の計102カ所で、収容人数は合わせて22,591人。感染症対策をとる場合は13,554人になります。
停電と断水の問い合わせ先を台風のあとに探すのは、けっこう大変です。九州電力送配電の停電情報と、住んでいる市町村の防災ページ。この2つだけは、シーズンに入る前にブックマークしておくのをすすめます。
まだ分かっていないこと
名瀬では1970年8月13日に、最大瞬間風速78.9m/sが観測されています。日降水量の記録は2010年10月20日の622.0mm。どちらも今も破られていません。この規模のものが来たときに私の家がどうなるかは、想像がつきません。
火災保険の風水害の特約や、罹災証明の取り方も、まだ自分で使ったことがないので書けません。使ったことのない手続きを、経験したように書くわけにいかないからです。ここは空けたままにします。
私が答えられるのは、あくまで「まだ大きいのが来ていない家の備え」までです。移住を決める前の心配ごとを順番に並べた話は、「奄美大島の移住は後悔ばかり」?のほうにまとめました。
まとめ
台風そのものは、家にいれば過ぎていきます。私の場合、しんどいのはいつも、そのあとに続く停電と、戻らない棚のほうでした。
- 保冷剤を凍らせる
- クーラーボックスを出しやすい場所に置く
- 普段の買い物を少し多めにして、使った分を補充する
- 九州電力送配電の停電情報と市町村の防災ページをブックマークする
この4つだけなら、今日中に終わります。
島に来たばかりで最初の台風シーズンが不安なら、全部を完璧にそろえなくて大丈夫です。「停電が3日続いても平気か」だけを自分に聞いてみて、答えが出ないところから順番に埋めていけば間に合います。島の暮らしの数字をもう少し広く見たい人は、データで見る奄美大島も合わせてどうぞ。
出典
- 気象庁/奄美地方への台風接近数
- 気象庁/名瀬の観測史上ランキング
- 九州電力送配電/停電情報
- 九州電力送配電/停電復旧までの流れ
- 鹿児島県/離島にお住まいの皆様へ
- 奄美市/避難所一覧(風水害時)
- 奄美市/総合防災ハザードマップ
- パナソニック/冷蔵庫の停電前の準備と停電時・停電復旧後の対処方法
停電戸数・断水・欠航の記録は、南日本新聞・南海日日新聞・MBC南日本放送が2024年から2026年にかけて報じた内容によります。数字はいずれも報道時点のもので、最終的な集計とは違うことがあります。
このページについて: 一世帯の備えと、公表されている記録をまとめたものです。台風の被害は年によっても地区によっても変わります。避難の判断は、必ず住んでいる市町村の発表を確認してください。
よくある質問
奄美大島に台風は年に何個くらい来ますか?
気象庁の統計では、2016年から2025年の10年間で奄美地方への接近は合計40個でした。ならすと年4個ですが、少ない年は2個、多い年は9個と大きく振れます。今年が少なくても来年が少ないとは限りません。
停電はどのくらい続きますか?
2026年8月の台風13号では、停電4日目にあたる日の夜でも奄美大島でまだ5,790戸が復旧していませんでした。倒木で電線が切れ、土砂崩れで電柱が傾くと、道路を片づけてからでないと直せないためです。
台風シーズン前に何を準備すればいいですか?
保冷剤を多めに凍らせておくことと、クーラーボックスをすぐ出せる場所に置いておくこと。この2つを毎年6月にやっています。台風が近いと分かってから凍らせても間に合いません。
食料と水は何日分あればいいですか?
鹿児島県は離島に住む人へ、最低3日分、できれば1週間分の食料と飲料水を用意するよう呼びかけています。台風で船と飛行機が欠航すると、本土から運ばれてくる食料品がそのまま届かなくなるためです。
停電すると水も止まりますか?
止まることがあります。2024年9月の台風13号では、瀬戸内町の阿木名で停電の影響により一時的に断水しました。水道は電気で動くポンプで水を上げているので、停電が長引くと水も出なくなります。
停電の状況はどこで見られますか?
九州電力送配電の停電情報のページで、市町村ごとの停電戸数が5段階で表示されます。戸数は10戸単位に四捨五入されていて、停電履歴から過去の停電も見られます。シーズン前にブックマークしておくと楽です。